ごあいさつ
ここ数年来、地方都市で多くの美術館や博物館の建設計画が進められ、また、2007年も、乃木坂に国立新美術館や
21_21 DESIGN SIGHT がオープンするなど、日本のミュージアム・シーンは、大いに活気づいているように見えます。しかし、その内情は、決して楽観できるものではありません。収集・展示や研究の対象が特定のジャンルに特化した専門ミュージアムの整備状況は、欧米諸国にくらべて大きく立ち遅れており、なかでも、今日、社会的な重要度が高まっている<デザイン>を専門とするデザイン・ミュージアムに関しては、ほとんど手つかずのまま、といってもよいでしょう。デザイン・ミュージアムの必要性に関しては、今さら述べるまでもありません。
欧米諸国では、アメリカのニューヨーク近代美術館「建築・デザイン部門」、フランスのポンピドゥ・センター「産業創造センター」[CCI]はもとより、1980年代以降、イギリスのコンラン・ミュージアム、デザイン・ミュージアム、ドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアム、ノルトライン・ヴェストファーレン・デザイン・センター、イタリアのアレッシィ・デザイン・ミュージアムなど、各国で多くのデザイン・ミュージアムの計画が積極的に進められました。こうした近年のミュージアムは、従来の「モダン・ミュージアム=近代美術館」とは異なり、出資企業の協力を得た一種の産学協同的な体制によって、過去の建築やデザインに関する膨大な知識やノウハウを再構成すると同時に、それらを現代社会において活性化するためのソフトウェアとして機能しており、いずれもその先駆的な役割が国際的にも高く評価されています。これに呼応するように、また、各国でさらに新たなデザイン・ミュージアムが産声を上げようとしています。
ひるがえって日本の場合、こうした施設は、企業ギャラリーを除けばきわめて少なく、現代のデザインのあるべき姿を思い描こうにも、そのプラットフォームを欠いているのが現状です。<デザイン>を、わたしたちの重要な文化資源として捉えたときに、その過去と現在を認識し、未来に向けてつないでいくシステムが機能していない現状は、危機的ですらある、といわざるを得ません。そうした行きづまりを打開し、新たなプラットフォームを築くために、わたしたちは2007年に「デザイン&ミュージアム・リンク」を設立し、各所でさまざまな活動を展開したばかりです。
わたしたちの組織は、日本のデザイン・ミュージアムが大いに立ち遅れている、という前提を共有し、そのうえで今後の展望を探り、展覧会やシンポジウムの開催、機関誌と叢書の出版、教育、授賞、デザインの収集・保存を促進するプログラムなど、さまざまな事業を展開するなかで、多くのデザイン研究者、学芸員、ジャーナリストらのネットワークを構築し、また海外の関係者との親睦を深めていくこと――広くデザインとミュージアムを結ぶ「かなめ=リンク」になることを目ざしています。もちろんこのウェブサイトも、その発信拠点のひとつです。
一朝一夕に現状が変わるわけではありませんが、参加者各位の努力の積み重ねによって、少しずつ現状を変革していく所存です。
わたしたち「デザイン&ミュージアム・リンク」の活動主旨について、ご理解、ご賛同いただける皆さま方の積極的なご支援、ご協力を期待しております。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
デザイン&ミュージアム・リンク
柏木 博[デザイン評論/デザイン史家、武蔵野美術大学教授]
深川雅文[川崎市市民ミュージアム学芸員]
暮沢剛巳[美術批評]
紫牟田伸子[日本デザインセンター チーフ・プロデューサー]
橋本優子[宇都宮美術館主任学芸員] |